第十四話 『月夜のレストラン』
月明かりがさすそのお店は
街の片隅にあって
行き場のない人々を
見守っている。
どんなものだろうと
受け入れ
道ゆく人に
温もりを与える
その店の名はーーー
「そう、ファミレスです」
「これ、犬なんですかね?」
3人は、探し犬の写真を見つめる。
「むしろ、人に近いな」
「そうですね、二足歩行ですね」
「そういえば、
ウサギさんは人なんですか?」
(いまさら!?)
「まあ、こまけえこたあ
いいんだよ!」
「それよりぼうず!」
「おめえはまたなんで
探偵になったんだ?」
「…両親を探すためです」
「そうか、色々事情があるんだな」
「おれあ昔から
探偵もののドラマが
好きなんだ」
「犯人はおまえだ!っていう
あの瞬間が、最高にクールだね」
「そういえば、ウサギさんは
どこの方言なんですか?」
「こまけえこたあいいんだよ!」
「あ、コーヒーきましたよ」
ズズズズ
アチッ!
「猫舌ですか?」
「うるせえ!」
一行はファミレスをあとにし、
聞き込みへ向かう。
「よし、まずは一軒目だ」
ピンポーン
「はいはい、どちらさまですか?」
中から年配のお年寄りの声
が聞こえる。
「月野探偵事務所の者です。
少しお話を伺いたいんですが」
「はいはい、いまでますよ」
ガチャ
ガラガラ
「あの、この写真に載っている
犬を見たことはありませんか?」
中から出てきたお婆さんは
なんだか虚ろな目で、
とても現実が見えている
ようには思えなかった。
(このお婆さん大丈夫か?)
「いえ、知りませんね」
「そうですか、ありがとう
ございます」
「よし、じゃあほかも詳しく
あたるぞ。とりあえず、
二手に分かれよう」
「どっちが光さんに付きます?」
「もちろんおまえやがな」
「そうですか」
「まえまえからおまえは
足手まといやと思おとった
とこや」
「なんてこというんですか!」
「とにかく、おまえはその
坊主に付け」
「…はい」
「じゃ、また後でな」
「もう、私がどれだけ苦労して…」
「大変ですね」
「ほんとです!」
「では、行きましょうか」
「はい!」
一行は、探し犬を見つけるため、
聞き込みを続ける。
第十二話 『妹の死体、光射す部屋』
妹は、昔から身体が弱かった。
だから俺はしょっちゅう
妹の側で看病をした。
妹がいじめられていると
聞けば、飛んで駆けつけた。
高校生になったが、
相変わらず身体は弱かった。
中学校は、ほとんど
入院していたような
ものだ。
貧血ばかりでしょっちゅう
倒れたが、本人はもう
それが当たり前になっていた。
家族だけが呼び出された。
「娘さんの身体は、
もう長くは生きられない。
もちろん、
すぐに死ぬわけではない。
成人はするだろう。
だが、20代半ばには、
身体が悲鳴をあげるだろう」
彼女の骨は、もう彼女を支える
ことができないのだ。
骨が常人よりも早く老化する
病気らしい。
どうしてあの子だけが。
おれは神さまに祈った。
どうにか彼女を救うことは
出来ないだろうか。
そんな矢先の出来事だった。
妹が死んだ?
なぜ…
死ぬにはまだ早すぎる。
おれはまだ何もしていないのに。
まだ彼女に何もしてやれて
いないのに。
どうして神さまはこう、
残酷なんだ。
あいつが、
いったい何をしたっていうんだ。
彼女は、誰よりも時間の大切さを
知っていた。
日々弱っていく身体を前に、
彼女は絵を描き続けた。
彼女は絵を描くのが好きだった。
いつか自分の絵で、誰かを感動させたいと彼女は語った。
両親には散々反抗していたが、
それも自分の思い通りにならない
人生のいらいらを、他にぶつける
あてがなかったのだろう。
むしろ、ああでもしなければ、
彼女の精神は保たなかったように
思う。
バン!
自宅のドアを勢いよく開ける。
中には、警察が集まって話を
していた。
「おそかったな」
「うるさい」
猫がおれに話しかける。
今はそれどころではない。
ブルーのシートをめくる。
そこには、干からびた脱け殻の
ような彼女の死体があった。
うわあああああああ
部屋中に響いた声は
遠くの彼方まで響いて
窓からさす月明かりが
彼を慰めるように
輝いていた。
第八話 『三毛猫の探偵』
賢そうな猫が、
パイプを持ちながら
カツカツと靴音を鳴らし
部屋の中を歩く。
ホームズのような格好が、
ますます彼を知的に見せている。
彼は帽子をくいと上げ
口をひらく。
「害者の死因は? 」
「わかりません」
「わからない?」
近くにいる彼らは月光警察。
この街の治安部隊である。
「どれどれ」
返事がない。ただの屍のようだ。
「これは…」
猫は肉球をあごにあて、
しばし考える。
「夏目さん!」
「吾が輩は猫である。名前はまだない」
「なにいってるんですか!」
彼は夏目ネコ。この街を拠点にする月の探偵団の一員である。
「ちょっとこちらへ」
なにやら、うさぎと女が騒いでいる。
「おまえたち、こんなところでなにをしている」
「うるさい!毎度毎度捕まえおって!我らは探偵だ!ちょっと家の近所で聞き込みしておっただけだろう!」
「はん、免許など持ってないだろう」
「うさぎさんは好きで免許持ってないわけじゃないですよ!」
「それはどうだろう」
「え」
「とにかく、素人が事件に口を出すな」
「うるさい!夏目ネコ!今日こそ貴様を倒す!」
うさぎが耳を立てる。
臨戦態勢に入ったようだ。
「はん、この白うさぎめ」
猫は余裕でひげを撫でる。
「夏目さん!」
「どうした」
「死因がわかりました」
彼らが死体を囲む。
「どうやら、害者は影を抜かれたようです」
「なんだと」
「それって…」
「はい、何者かによって影を奪われたことにより、生命力を失われたと思われます」
「影を抜かれた…」
「月の魔物です」
「なに」
窓の外には
白い光がぽつぽつと
輝いて
まるで雪のようだった
それらはしだいに
集まって
実体をともなうと
そこには
羽の生えた
小さな妖精がいた